昨日、大阪商工会議所と中央労働災害防止協会が主催する『メンタルヘルス対策は なぜ、必要なのか?』のセミナーを受講してきました。

人口の2~5%がうつ病に罹っているとも言われる昨今、職場におけるメンタルヘルス問題も増加しており、例えば平成24年度の精神障害の労災認定は475件で、前年度に比べて約1.5倍に増えています。メンタル不調者が発生すると、職場の活力や生産性が低下するだけでなく、企業が安全配慮義務を問われ、多額の損害賠償責任を負うことになるケースも珍しくありません。

セミナーでは、企業がなぜメンタルヘルス対策をしなければならないのか、具体的にどんな対策をとればよいのか、多くの企業の安全衛生の取り組みをサポートしてきた講師がわかりやすく説明してくださいました。



現状では、1か月以上メンタルヘルヘルスによって長期休職している人は1.12%になり、100人中1人以上は休んでいる状態だそうです。15年前では400人に1人でした。そのうち、メンタルヘルスが原因の人は6~7割。その経済負担は年間で2兆千億円以上もあるというのです。

また、日本の人口1億2千万人中、300万人が精神疾患で治療を受けているという実態があり、驚いたのは、交通事故で死亡する人数よりも、自殺者の数はその6倍にもなるのだということです。

職場のメンタルヘルス不調者のその後の調査では、
・休職を経て復帰後、退職・・・9.5%
・休職を経て退職・・・14.8%
・休職せずに退職・・・9.8%
・長期の休職または休職、復帰を繰り返している・・・8.2%
これらの合計は42.3%にもなり、メンタルヘルス不調は、なかなか治らないことがわかります。

ですから、職場内での日ごろからの予防が大切だということです。

職業生活におけるストレス等の原因
〈ストレスを感じる者の割合を100としたときの割合(%)〉

職場の人間関係・・・41.3%(男性35.2%、女性48.6%)
仕事の質の問題・・・33.1%(男性34.9%、女性30.9%)
仕事の量の問題・・・30.3%(男性33%、女性27%)

これが職場での3大ストレスとなっているようです。

そして、「精神障害の労働補償状況の推移」(「納・心臓疾患と精神障害の労働補償状況」厚生労働省より)では、
平成11年度では、請求件数155件、支給決定14件、うち自殺者無し、だったものが、
平成24年度では、請求件数1257件、支給決定475件、うち自殺者93人、と増大しています。


これは、企業側が社員の心のケア、リスク管理をやらないといけない時代なのだということです。

ある企業の労災の裁判では、メンタルヘルス不調による自殺者に対して、広島裁判所は1億1111万円の支払いを会社に命じた例もあります。その内容は、「安全配慮義務を怠った過失により、労働契約上の責務不履行責任、不法行為責任を認める」というものでした。賠償よりも一番大きいのは、信頼がなくなってしまうという危機です。そのような訴訟事態が、会社にとっては大きな損失になります。

ですから、社員が労災となれば、その損失たるものは多大ななものになるのだというリスク管理を考えなければならないのです。

職場でのメンタルヘルス対策の進め方
~メンタルヘルス指針に沿って~

「労働者の心の健康維持増進のための指針」(健康維持増進のための指針公示第3号 平成18年3月31日 厚生労働省」というものがあります。

1.趣旨
本指針は、動労安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づき、同法第69条第1項の設置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずるように努めるべき労働者の心の健康の保持増進のための設置(以下「メンタルヘルスケア」という。)が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定めるものである。

となっています。

指針によれば、「メンタルヘルスケアの具体的な進め方」として、

まずは、心の環境づくりの策定をします。
事業者による、計画の策定と実施

セルフケア
労働者による「ストレスの気づき」「ストレスへの対応」「自発的な相談」

ラインによるケア
管理監督者による「職場環境等の改善」「個別相談対応」「セルフケアの実施」

事業場内産業保健スタッフ等によるケア
産業医、衛生管理者等による「労働者・管理監督者への支援」「メンタルヘルスケアの企業立案」「個人の健康情報の取り扱い」「ネットワークの形成」

事業場外資源によるケア
事業場外の機関、専門家による「直接サービスの提供」「支援サービスの提供」「ネットワークサービスへの参加」

以上が、指針に基づいたメンタルヘルスケアの進め方です。


次に、
ラインによる(管理監督者が労働者の心の健康の保持増進のために行う活動)というものがあります。

日常的に労働者と接する現場の管理監督者が行うケアです。

1、職場環境等の問題点の把握と改善
2、「いつもと違う」部下への把握と対応
3、部下からの相談への対応
4、メンタルヘルス不調の部下の職場復帰への支援

この中で、一番重要なのは、「いつもと違う」部下への把握と対応です。
「いつもと違う」と思ったら、要注意です。

気づいたら、「声をかける・直接話を聴く」ことが重要で、これは病気かもしれないと思った場合や自分のレベルで解決できないと思ったら、「一緒に相談に行こう」と誘って、産業医や産業保健スタッフに相談するよう勧めます。

そして、当事者は、ひとりで抱え込まないこと。

1~2週間観察して状態が悪化する場合には、即、産業医や産業保健スタッフに相談するようにしましょう。


メンタルヘルスケアは、いろいろと専門的なことで難しいこともありますが、
要するに、職場のメンタルヘルス活動の基本は、従業員を大切にし、働きがいがあり、快適で働きやすく、風通しの良い職場をつくることです。

そして、上司は不調だと思う部下に対して、「眠れているか?」「食べられているか?」これだけは聴いてほしいそうです。


このセミナーを受講して思ったことは、「人間関係のストレス」が一番の原因であるということですから、普段からコミュニケーションを良くし、風通しの良い職場環境が一番の対策になるのだと思いました。

そして、メンタルヘルス不調は、生活習慣病のように誰にでもあること。
しかし、高血圧や高血糖といったものは、あまり仕事に障害はありませんが、メンタルヘルス不調になれば、一気に仕事の能率は低下します。集中力がなくなるので、残業が増える、ミスが多くなり時間がかかるなどのコストがかかります。また、遅刻、早退、無断欠勤も増えてくると会社としては、損失も大きくなっていくでしょう。

ですから、普段の職場環境つくりがいかに大切かを思い知らされました。


私が現在行っている仕事は、メンタルヘルス心理カウンセリング、コーチング、相談です。「事業場外資源によるケア」に属するものですが、メンタルヘルス予防対策になっているのかということを改めて実感しています。

どうぞ、事業者の皆様は、社員のメンタルヘルス対策を積極的に行っていただければと思います。