子どもが生まれる前は、「五体満足で生まれてくれればいい」と親ならば誰もが思ったことだと思います。そこに子どもに対する過剰な期待はありません。
しかし、一年も経たないうちに、あれができない、これが遅いなど、あれこれと心配したり、期待したり…。

昨今では、情報があふれていて、早期教育をやらないと遅れてしまうような風潮もあったりします。

確かに、0歳児の脳は急速に発達することには間違いありません。
「子どもの能力を幼児期に高めることで人生を豊かに幸せに過ごして欲しい!」と願うパパママが増え、幼児教室などに通わせていると聞きます。幼児教室では、文字・漢字・言葉・数・図形などをパズルやタングラム、フラッシュカードなどの教材を用いて学習させているようですが、一方では早期教育による子どもへの弊害も指摘され始めています。

今日は、早期教育の利点と弊害について、考えてみたいと思います。

人間の脳は、無数の神経細胞(ニューロン)から成り立ちます。
このニューロン同士を結合させる結合部分はシナプスと呼ばれ、このシナプスの数が多いほど人間の運動能力・記憶力・創造力・理解力が優秀になると言われています。
またシナプスは0歳から3歳までに8割、6歳までに9割、12歳までにほぼ10割が完成すると言われています。これが、乳幼児から学童期の育ちがとても重要だと言われる所以です。

ではどうすればシナプスは増え、子どもの能力は伸びるのでしょう?
実は、「うれしい、楽しい、面白い」そう感じることのできる体験や経験がシナプスの数を増やし、素晴らしい能力を開花させるのです。つまり早期教育を受けなくても、楽しく様々な体験を積んでいる子の脳は、自然に賢くなるというわけです。

保育園や幼稚園を選ぶときに絶対に見てほしいところは、先生と子どもの表情です。
そこの園が明るい雰囲気かどうかは、そこで働く先生たちが元気で生き生きとしているかだといっても過言ではありません。保育内容がマンネリ化していないか、園長先生が積極的に保育に関わっているか、先生たちの人材育成に積極的な園であるか、必要な遊びの展開ができる園であるか…。
つまり、子どもの脳を開花させる保育・教育を実践しているかが重要なのです。
これは、大規模園か小規模園かは、あまり関係がありません。

子どもの脳を発達させるには、文字や数字などの特定の知識を詰め込むのではなく、感情を豊かに育み、本人に多くの経験をさせることが大切です。


それでは、文字や数字などの特定の知識を詰め込む早期教育には、一体どのような弊害があるのでしょうか?

自然な脳の発達を阻害する
早期教育により知識のつめこみを行うと、「自然な脳機能の発達を阻害してしまう恐れがある」と言われています。脳が未成熟なうちに情報を詰め込むことで、本来発達するべき「感情」や「個性」を育む脳の活動が損なわれてしまう可能性があるそうです。

情報のインプットばかりせず、いろいろな体験をさせましょう。
シナプスは愛情、肌の触れ合い、会話などの受け答えを伴うコミュニケーション、適度な音楽や運動などの刺激、お手伝い、外遊び、自然体験などにより増えていきます。

コミュニケーション能力が育たない 
早期教育に時間をとられると、子ども自身が自発的に外に出て友達を作り、ケンカをしながら共同作業を行っていく本来の「遊び」が減ってしまいます。
この自発的な友達との遊びが減ることで、コミュニケーション能力の発達を阻害してしまう恐れがあると言われています。

「早期教育のお教室で遊べるから…」と思うママも多いと思います。
しかし、早期教育の遊びは一方通行の遊びが多いため、コミュニケーションを伴わない孤独な遊びの時間となりやすいのです。

つまり早期教育は、幼児期に学ぶべきコミュニケーション能力が育つことを期待できない場合が多いと言えます。

公園に連れていったり、お友達を呼んだりして、子ども同士で遊べる機会を多く持たせましょう。その際に親が口を出し過ぎたり、無理強いせずに、子どもの自発的な意志を大切にしてほしいなと思います。

「つまらない」は悪いことではありません。友達を作りたいという意欲に繋がり、幼児期の集団生活の礎になります。集団生活を通して自発的に考える力、物事を正しくとらえて判断する力、想像力や感受性などを育むことが将来の様々な能力を伸ばすことに繋がります。親や先生が意図的に子どもを楽しませてあげるのではなく、子どもの意思で楽しむことを見つけられる環境にするよう工夫してみましょう。

自己肯定感が育まれない
自己肯定感とは、「自分はかけがえのない大切な存在だ」と自分の存在を肯定できる気持ちのことです。子ども時代に「自己肯定感」を育むことは最優先にすべき教育と言えます。なぜなら自己肯定感こそが人間の生きる基盤、生きる意欲となるのです。
ところが早期教育で自己肯定感を失くして自分を愛せない人間に育ってしまうと、他人を愛することも他人に愛されることも難しくなります。

早期教育を受ける子どもたちは、楽しくて、喜んでプログラムに取り組むことが多いです。それはできることを親に褒めてもらえるからです。では逆に、子どもが親の期待に応えられない場合、子どもはどう感じるのでしょう?

目の前のプログラムがこなせない、要求されている答えが導き出せない。そんな時にママの溜息やパパの困った顔を見て、子どもは悲しみ、自己肯定感を失ってしまいます。そして、親の期待に応えることや良い評価を得ることだけが大切だと勘違いしてしまい、自分の存在そのものが素晴らしいという、本来持つべき自己肯定感を育むことが難しくなります。
その結果、大きくなって学習意欲を失ったり、中には自分をわざと傷つけてしまう子どもたちもいるそうです。


子どもに過大なストレスを与える
早期教育により常に知識を詰め込まれ、親の期待に応えることを要求されると、心も体も未発達な子どもにとっては大きなストレスになります。その結果、疲れやすくなったり、頭痛がしたりという症状を引き起こし、重い病気を発症してしまう可能性があります。また、人格形成にも影響を及ぼします。

常に緊張状態でいることを強いられた子どもは、良い結果を出そうと頑張り、自分の意思に関係なく交感神経を活発にさせて、体が興奮状態になります。長い時間興奮状態を維持することで、血管が収縮して血液の巡りが悪くなると、脳に酸素が供給できず、脳の正常な発達が阻害されてしまいます。

脳の機能の発達が阻害されることで、突然奇声を上げたり暴れだす「キレやすい」人格が形成されてしまったり、自傷行為をくりかえす危険性も…。

幼児期には自分の意思を表現できませんし、表現できても大好きな両親から与えられたものには「イヤ!!」とは言えません。
だからこそ、親は子どものストレスのサインを見逃なさいように注意することが必要なのです。

気を付けたい幼児のストレスサイン
・疲れや無気力な行動
・下痢や腹痛、嘔吐やめまい、頭痛などの身体症状
・チックやどもり
・おねしょや頻尿
・気管支ぜんそくや円形脱毛症
・指や物を噛んだりくわえたりする


親子の関係を壊してしまう
何もできなかった我が子が、早期教育によって目まぐるしく知識や技能を身につけていくと、親は子どもの脳の発達以上の教育を注ぎ込もうとする傾向があります。その結果、親子の信頼関係を壊してしまうことがあります。

始めは何の意思表示をしなかった子どもも、いずれ「アレは好き」「コレはイヤ」という「自我」を持ち、親から離れて自分の思い通りのことをしたいという、「自発性」が芽生えてきます。そんな時に、一方的に知識や技能をママやパパが押し付けてきたら子どもはどう感じるでしょう?
「自分のできないこと、嫌なことを押し付けられた…」そう感じた子どもは、その場で言葉や態度に表さなくても、内心親への信頼を失ってしまいます。ひどい時には、親子の絆が修復困難なほどに壊れてしまうこともあるのです。

幼児期の親子の信頼関係は、その後の人間関係の基礎となるものです。
子どもの信頼を失うことがないように、子どもの発達に見合った、子どもの個性にあった子育てや教育を見極めていくことが肝心です。

早期教育が親に与える弊害
「親が選び、望んだ将来が、子どもにとっての幸せであるとは限らない」
そんな当たり前の思考を親から奪ってしまう…。それが早期教育が親に与える弊害です。

早期教育を行うことによって一定の成果を得られれば、さらなる上を目指してしまう親の欲望。他の子どもよりも上を目指そうとする親の競争心。
それが子どもを追い詰め、親子関係を悪化させ、間違いに気づいたときには子どもは心に大きな傷を負い、親は多額の教育費を使っていた…というケースもあります。

親としか社会とつながるすべを持たない幼児は、早期教育が親に与える弊害をダイレクトに自分のものとして引き継いでしまいます。概ね早期教育の弊害は、大きくなってから出てくるようです。

やはり子ども時代は、異年齢の子ども達の中で様々な体験・経験をしながら、面白くて楽しい笑顔いっぱいの時間を過ごすことが一番幸せなのかもしれませんね。

そのことを心において、子どもの育ちを応援していきましょう。

心の掃除をしましょう

いじわるの対処法