今から2,600年前に、仏教を教えられたお釈迦様は、次のような説話を残されています。

ある日のことでした。
お釈迦様がお弟子たちと托鉢(たくはつ)されていると、大きな橋の上で、あたりをはばかりながら一人の娘が、しきりと服の中へ石を入れているのをごらんになりました。

「自殺しようとしているのだな」と知られたお釈迦様は、早速娘のそばまで行かれてやさしく訳を尋ねられると、相手がお釈迦様とわかった娘は心を開いて苦しみのすべてを打ち明けました。

「お恥ずかしいことですが、私はある人を愛しましたが、捨てられてしまいました。世間の目は冷たく、やがて生まれてくるお腹の子どもの将来を考えますと、いっそ死んだ方がどんなにましだろうと苦しみます。こんな私をあわれに思われましたら、どうかこのまま死なせてください」

その時お釈迦様はとても哀れに思われ、こう諭されました。

「不憫なそなたには例えをもって話そう。あるところに、毎日、重荷を満載した車を朝から晩まで引かねばならぬ牛がいた。つくづくその牛は思ったのだ。『なぜおれは、毎日こんなに苦しまなければならないのか。いったい自分を苦しめているものは何なのか。そうだ!オレを苦しめているのは間違いなくこの車だ。この車さえなければオレはこんなに苦しまなくてもよいのだ。この車を壊そう』
そしてある日、牛は猛然と走って、おおきな石に車を打ち当て木端微塵に壊してしまったのだ。それを知った飼い主は驚いた。「こんな乱暴な牛には、よほど頑丈な車でなければまた壊される」
飼い主はやがて今までの車の、何十倍の重さの鋼鉄製車を造ってきたのだ。
その車に満載した重荷を、今までのように毎日引かされ、以前の何百倍も苦しむようになった牛は、再び壊すこともできず、深く後悔したが後の祭りであったのだ。
牛は自分を苦しめていたいるのは車だと考え、この車さえ壊せば自分は苦しまなくてもよいのだと思ったのと同じように、そなたはこの肉体さえ壊せば、苦しみから解放され、楽になれると思っているのだろう。そなたにはわからないだろうが、死ねば、もっと恐ろしい苦しみの世界へ入っていかなければならないのだよ。その苦しみは、この世のどんな苦しみよりも大きくて深い苦しみである。そなたは、その大きな苦しみの世界を知らないのだ」

そして、お釈迦様は、すべての人に後生に一大事のあることを諄々と話されたのです。お釈迦様の説法を聞いた娘は、自分の愚かな考えを深く後悔し、仏教を真剣に聞くようになり、幸せな生涯を生き抜いた、と言われています。

そしてお釈迦様は、
「この世、苦しみのままで死ねば、必ず死んだ後も苦しみである。未来、幸せになろうと思うなら、この世から幸せの身にならねばならない」
と説かれたのです。

10代からの子育てハッピーアドバイスより出典~

ギャングエイジ(小学3~4年生)

徳のはなし