発達と聞くと、乳児期から青年期のことを言うように思いますが、実は人間は生涯にわたって心理的に発達し続けるものなのだそうです。

エリク・ホーンブルガー・エリクソン(発達心理学者)が提唱した、「人が生まれてから死ぬまでに心理社会的にどのように発達するか」を心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)といいます。そこには、『発達課題』があり、アイデンティティの構築がカギとなるようです。発達課題がどのように解決されるか、もしくは解決されないかによって、その後の人格形成に影響を及ぼすとされています。

心理社会的発達理論では、発達段階が8段階に分けられており、各段階の発達課題が「対」という対の形で表記されています。各発達段階には乗り越えるべき課題(発達課題)と危機(心理社会的危機)、そして、危機を乗り越えて獲得するものが設定されています。

 1.乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):「基本的信頼感」対「不信感」…「希望」の感覚
 2.幼児前期(1歳6ヶ月頃~4歳):「自律性」対「恥と疑惑」…「意思」
 3.幼児後期(4歳~6歳):「積極性(自発性)」対「罪悪感」…「目的」の感覚
 4.児童期・学齢期(6歳~12歳):「勤勉性」対「劣等感」…「有能刊」
 5.青年期(12歳~22歳):「同一性(アイデンティティ)」対「同一性の拡散」…「忠実」
 6.成人期(就職して結婚するまでの時期):「親密性」対「孤立」…「愛」
 7.壮年期(子供を産み育てる時期):「生殖性」対「停滞性」…「世話」
 8.老年期(子育てを終え、退職する時期~):「自己統合(統合性)」対「絶望」…「英知」


今日は、1.乳児期(0歳~1歳6ヶ月頃):基本的信頼感vs不信感について、取り上げてみたいと思います。

私の孫は生後8か月になり、ちょうどこの時期になりますが、孫を見ていると発達段階がよくわかります。子どもの発達を援助するうえで重要なのは、発達段階の特徴を理解することです。この時期は、赤ちゃんがママとの一体感やママへの信頼感を経験する時期で、発達課題は「基本的信頼感」対「不信感」です。

基本的信頼感とは、他人からありのままを受け入れてもらえる安心感と、他人に受け入れてもらえる自分を価値のある人間だと思える自分への信頼感のことで、他人と情緒的で深い人間関係を築くための基礎になるものです。

乳児期のうちに、パパママからおっぱいやミルクをもらい、おむつを交換してもらい、あやしたり寝かしつけたりしてもらうなど、たくさんお世話してもらうことで、基本的信頼感が育まれていきます。乳児期に基本的信頼感が十分に育まれないままになると、安心感や自身が持てず、自分や他人に対する不信感が募っていきます。

乳児期に芽生えた不信感は払しょくすることが難しく、その後の人生を通して心の中に残ることが多い深刻なものになりがちだと言われています。

私は、大人のカウンセリングやコーチングを行っていますが、中には人格形成の基礎が何らかの理由で欠落しているのではないかと思われる人もいます。大人になってからの改善は、なかなか難しいものがあります。
こんなに長い時間、苦しまなければならないのかと思うと、乳幼児期の育てられ方というのはとても重要なのだと改めて思わされます。

初めての子育てはわからないことばかりですが、発達課題の信頼感を育てることだとみれば、赤ちゃんの欲求を満たしてあげたほうがいいことになります。この時期にできた親子の絆は、生涯にわたって心の基礎となるものです。

赤ちゃんを持つ方は、できるだけ赤ちゃんと穏やかに笑って過ごせるように工夫してほしいなと思います。

一水四見(いっすいしけん)

『自分軸』を持つ